マイホームとして新築一戸建てを選んだ場合、大きな選択肢となるのが「建売住宅」にするか「注文住宅」か。建売住宅はすでに建築されているもの、注文住宅はデザインや間取りを自分で決められるもの、とそれぞれの特徴をぼんやりと理解してはいても、一生で一番大きな買い物とされるマイホームの購入ですから、実際に選ぶとなるとやはりどうしても悩んでしまうのはしかたのないことかもしれません。

そこで今回は、建売住宅と注文住宅の特徴を知った上で比較し、自分たちにはどちらが向いているのかまでを考えてみましょう。

《建売住宅と注文住宅それぞれの特徴と違い》

建売住宅と注文住宅の最も大きな違いは、「建っているものの中から選ぶか、自分で選んでこれから建てるか」になります。 比較をする前に、それぞれがどんな特徴を持っているのかを知っておきましょう。

■建売住宅

建売住宅は、基本的に「すでに建築されたものを販売している」もので、新築分譲住宅として土地と建物のセットで販売されています。建設中に販売が開始されるケースもあるものの設計は決まっていますので、たとえ完成前に購入したとしても内容の変更が出来ないことがほとんどです。

建売住宅販売を行う不動産会社は独自の土地購入ルートを持っており、市場にはまず出てこないような土地を購入することが可能です。個人での購入が難しい広い土地を買い取り、細かく区分した上で建設し販売までを同グループ会社で行う事が最も多くなっています。
また、類似の物件を複数建てることになりますから、資材は大量一括購入ができますし、作業の効率化も図れるため建設費用が抑えることが可能。それにより、注文住宅よりも割安で購入できることが建売住宅の最大のメリットと言えるでしょう。

広い敷地の家や畑の跡地などに建設される3～5棟程度の小規模なものから、区画整理の過程で誕生する数10～100棟単位の大規模な分譲住宅地までがあります。中でも、超大規模分譲地は全体のイメージから計画されていることにより、統一感をもった美しい街並みになることも特徴です。

■注文住宅

ハウスメーカーや設計事務所などに直接赴き、家づくりを依頼するところから始まるのが注文住宅になります。こちらは「建築のみ」であるため、土地を持っていない場合は予め土地を購入しておかなければなりません。

間取りやデザイン、内装、外装、素材、設備、建設する職人の技術までもとことんこだわれることが特徴で、相談しながら家族の好みやライフスタイルに沿った理想の家づくりを目指すことが出来ます。こだわりたい部分は予算をかけられる一方、特にこだわりのない部分は思い切って削ってコストを削除するなど、メリハリがつけやすいのも注文住宅ならではになります。

その分建売住宅よりも工期が長く完成までに時間がかかりやすくなっていますが、丁寧な作業で品質の良い家を手に入れることができるでしょう。

《入居までの期間と段取りはどう違う？》

物件の購入から引っ越しまでは時間や手間がかかるものではありますが、それが建売住宅か注文住宅かによってさらに大きく異なってきます。
どのように違いがあるのか、詳しく見ていきましょう。

■建売住宅

まずは予算や希望など、資金計画からのスタートになります。建売住宅の場合は元から土地と建物の価格がセットととなって出ているため、計画が立てやすいと言えるでしょう。

どのくらいの価格帯の物件が購入できるのか目安がつけば、いよいよ物件探しです。不動産情報サイトや不動産仲介会社を利用して、気になる物件を探し出します。建売住宅は間取りや内装、設備などは選ぶことができず、完成された（もしくはこれから完成する）物件を選ぶ形になるため、自分たちの希望に合ったものを探し出しましょう。
ただし、あまりにも希望条件が多すぎると見つからない、見つかっても非常に時間がかかってしまうこともありえますので、“どうしても譲れない条件”を5つ前後まで絞ってからのほうが良いかもしれません。

購入希望の物件が見つかったら、内覧に進みます。建物の状態確認は必須であり、希望条件にしっかりあっているかをチェックしましょう。気になる点が見つかったら必ず担当者に確認することが、後に後悔しないためのポイントです。
購入したい物件が見つかれば購入の申し込みを行い契約になります。不具合があれば修繕を行い、引き渡しが行われることで物件の所有者は買主に移り、やっと引っ越しが可能となるのです。
順調に進めば完成物件で約1か月程度、建設前であれば4か月前後かかることになります。

■注文住宅

こちらも資金計画を立てるところから始まります。注文住宅は土地代と建築費はもちろんのこと、電気やガス工事費、申請費など多くの場面でお金がかかるため、それらを踏まえた計画が必須です。

住みたいエリアや家のイメージがまとまったら、まずは土地探しです。不動産情報サイトで探したり、希望エリアの不動産会社に直接向かうのも良いでしょう。一般的に土地の購入までにかかる時間は3ヵ月から6か月ほどが目安ですが、中には数年かかる方もいるようです。

次は家づくりを依頼する会社を探すことになります。ハウスメーカー、工務店、設計事務所がありますので、住宅展示場やモデルハウス、ホームページの施工例などを見て、住みたい家のイメージに近い建物を造る会社を絞り、見積を依頼して決めましょう。
こちらは土地の購入と同時並行で行うと効率が良くなります。

プランや設計の打ち合わせを行い、満足できる内容となれば施工の請負契約を結んでいよいよ着工です。家の完成と住宅ローンの承認が得られれば完成立ち合いの後に引き渡しが行われ、ようやく入居可能になります。
目安としては建築工事請負契約を結ぶまでがおよそ3ヵ月から10か月程度、着工してから完成してまではおよそ3ヵ月から6か月程度となっているようです。

《自分達にはどちらが向いている？》

建売住宅も注文住宅もそれぞれメリットとデメリットがあります。
そのため、一概にこちらなら絶対良いと言い切ることができませんが、それらを踏まえた上で「どのような人がどちらに適しているか」を見ていきましょう。

■建売住宅

土地を所有していない方や、出来るだけコスト抑えたい方、手間をかけずに早く一戸建てに住みたいと考えている方には建売住宅がおすすめになります。自分たちでゼロからひとつひとつ考えていくよりも、決められたデザインや間取りから好きなものを選びたい方であれば建売住宅が良いでしょう。
特に大規模分譲住宅地であれば、周りの住人のほとんどは同時期に入居します。生活環境から子育て世帯が多く、その繋がりで良好なコミュニティが構築されやすいことから、好んで建売住宅を選ぶ方もいるようです。

■注文住宅

住みたいエリアがある方、理想の家が明確にある方や依頼したいハウスメーカー・設計事務所が存在している方などは注文住宅がおすすめです。また、すでに土地を持っている、建て替えをするのであればこちらになります。
理想の家をゼロから作り上げていく注文住宅は、費用は建売住宅と比較すると高額になる傾向があるものの「自分たちだけの家」を形にできる喜びがあるものです。自分たちのためのマイホームには妥協したくない！と住まいに強い拘りをもっているのであれば、注文住宅一択でしょう。

《何を重視するかで選ぼう》

建売住宅は建売ならではの、注文住宅は注文ならではの特徴がありますので、どちらがより優れているということはありません。繰り返してしまいますがマイホームの購入は一生で一番大きな買い物とされていますし、1回、多くても2回程度しか購入しないものですから、どこまでこだわればいいのか、どこで区切りをつけていいのか、難しい判断であることは否めないでしょう。

もちろん、建売でもデザイン性の高いものもありますし、注文住宅でも参考となる設計プランをあらかじめ用意しているハウスメーカーなども存在しています。一番重要なのは「マイホームに何を重視するか」。求めているものを家族内でしっかりとすり合わせ、どちらを選択するか考えてみると良いでしょう。