マイホームを購入する際、気になるのは駅からの距離。中には、生活利便性のことを考えてこれを最重視する人も多いのではないでしょうか？不動産情報のサイトや広告でも「〇〇駅から徒歩〇分」、「〇〇バス停から徒歩〇分」と書かれています。

しかし実際のところ、歩く速度は人によってかなり違うもの。男性か女性かによっても差はありますし、大人か子どもかによっても大きく異なるものです。実際に歩いてみたら、書かれていた時間をオーバーしてしまったというケースもあるでしょう。

そこで今回はこの疑問を解決するため、「駅から徒歩〇分」は何を基準としているのかを詳しく解説していきます。

目次
距離ではなく「徒歩〇分」表記の理由
基準は誰なのか
「徒歩〇分」よりも時間がかかってしまう理由
実際に歩いて確認しておくと安心

《距離ではなく「徒歩〇分」表記の理由》

「徒歩〇分」という記載は、ほとんどは「実際には歩いてはいない」のが事実です。 中には歩いてみたと言う不動産会社もありますが、基本的には歩いて計測はしていません。歩く速度は人それぞれですし、天候や道路状況によって結果が異なることもあるでしょう。何度も歩けば平均値なら出すことは可能ではあるものの、多くの物件を抱えている不動産会社がとてもそんなことはできません。

それならば徒歩表記ではなく距離のほうが良いのでは、とも考えてしまいますが、実は規則によって決められているため、「徒歩〇分」という書き方を変更することは認められていないのです。
この表記は不動産用語では“徒歩所要時間”と言い、「不動産の表示に関する公正競争規約施行規則」によって算出基準が定められています。そのため、計測する人によってバラつきが出ることもなく、一定であるのは確かなのです。

《基準は誰なのか》

規則によって定められているということは、距離の計算方式があるということです。
計算方法はとてもシンプルで、「80ｍ＝徒歩1分」が基準になっています。

なぜ1分が80ｍなのかというと、“健康な女性が実際にハイヒールを履いて歩いたとき”の歩行速度をもとにしているのです。当初はわかりやすく100ｍ1分を検討していたものの、「女性にも適用できる現実的な基準を」ということから再考しなおした結果、現在の80ｍ/分に落ち着きました。

とはいえ、80ｍを1分で歩くということは、1時間あたり4,800ｍということ。その時速は4.8㎞にもなりますから、なかなかの速度かもしれません。

《「徒歩〇分」よりも時間がかかってしまう理由》

しかし、不動産情報をもとに実際の道程を歩いてみた場合、たとえ80ｍ1分の速度で歩いたとしても「徒歩〇分」よりも時間がかかることがほとんどでしょう。
その理由として、以下の理由が挙げられます。

■目的地の出入口までの距離ではない

徒歩所要時間は、駅の改札口から玄関までの時間ではありません。
たとえば駅の場合、駅の出入口を起点とします。改札口から出入口までにかかる時間は考慮されないため、この間の距離が長い駅の場合は想定した時間を超える可能性が高いです。また複数の出入口がある駅の場合、「物件に最も近い出入口」を起点としているのも注意点でしょう。

さらに物件のほうも同様で、玄関ではなく敷地が着点になっています。玄関がそこから正反対の向きであったとしても、そこからかかる時間は含まれません。そのため、敷地が広いマンションなどの場合は特に誤差が生まれやすくなっているのです。

■信号や坂などは考慮していない

直線距離での表記は認められていないため、実際に道を歩く“道路距離”ではあるのですが、信号や踏切での待ち時間は考慮されていません。
また、上り坂や階段などといった歩行の障害になる要因があったとしても、換算されることはないのです。
駅から物件まで、信号や坂道が一切ないということはほぼないでしょうが、この徒歩所要時間はあくまで「80ｍを1分かけて歩いた時間」になっているため、実際にかかる時間と異なってしまうのです。

《実際に歩いて確認しておくと安心》

徒歩〇分の根拠から、なぜ実際の所要時間と差が出るのかまでご理解いただけたでしょうか？

物件を選ぶ時に「駅までの距離」を重視する方は多いですが、このような理由で実際にかかる時間とのズレが生じていることがほとんどのため、記載されている所要時間は参考程度と捉えておくと良いかもしれません。
その上で気になる物件が見つかったら、やはり自分の足で歩いてみることが大切なのです。物件自体はとても魅力的であったとしても、駅まで信号が多かったり坂道や階段がいくつもあるようでは、日々ストレスが溜まってしまうことも考えられるでしょう。
実際に歩いてみないとわからないこともありますので、購入を決める前に一度歩いて確認しておくことをおすすめします。