[住活マニュアル] マンションの修繕積立金って必要?何に使われているの?|物件OFF

マンションの修繕積立金って必要?何に使われているの?

 

マンションを購入して住む場合、住宅ローンの返済や駐車場利用料などとは別に毎月支払わなければならないお金があります。それは、管理費と修繕積立金の2種類。“管理費”は何となくわかるけど、“修繕積立金”どうしてあるのか、なぜ毎月払う必要があるのか、管理費と何が違うのかとか、そんな疑問があるかもしれません。また、できれば少しでも安くならないかな?という事も考えてしまいがちです。
でも実は、この修繕積立金はマンションにとってかなり大切なもの。購入時には必ずチェックしておきたいほどの重要ポイントなのです。
ここでは、修繕積立金は何なのか、何に使われてるのか、どうして必要なのかをご説明します。


修繕積立金は何に使われているのか

 

《修繕積立金とは》

 

そもそも修繕積立金とは、建物診断や外壁・防水工事などマンション自体の機能や価値を維持するような工事の費用に充てられる、“計画的に積み立てているお金”のことです。わかりやすく言えば、そのマンションに住んでいる世帯全員の積立貯金のようなもので、毎月決められた金額を住民から徴収し、長期修繕計画に沿った大規模修繕の資金として貯められています。
長期修繕計画とは、10年後や20年後など先を見据え、マンションの老朽化を防ぎ性能を維持するため定期的に修繕する計画のこと。この修繕計画に基づいて毎月徴収する修繕積立金の金額が決定されているのです。



●修繕積立金は値上がりする?

この修繕積立金は、一度決定された金額がそのままずっと固定されているわけではありません。築年数が長くなれば長くなるほど金額も高くなっていくと認識しておいたほうが良いでしょう。
基本的に、販売戦略上で新築の時点では修繕積立金が適正価格よりかなり低めに設定されている場合が多いです。そこから適正価格に戻したとしても、最初の設定額から“値上がりする”のは決定的ですし、築年数が増えるほど劣化は確実に進みますから、その分のメンテナンス費も嵩みます。そのような大規模な修繕工事を実施するために修繕の見積もりを取った結果、修繕積立金の見直しが行われ、値上がりが決定されるというわけです。


修繕積立金は何に使われているのか:修繕積立金とは


《費用が不足しているケースも》

 

このようにマンションにとって必要不可欠な修繕積立金ですが、1回目の大規模修繕の費用は賄うことが出来ても、2回目、3回目の費用を捻出することが出来ないというマンションもあるようです。
上述したように、低めに設定されていた新築時の修繕積立金の額を数年かけて適正価格に戻す、というのが理想です。ですが住民からすれば「毎月の出費が増えてしまう」ことになりますから、簡単に受け入れてもらうことが出来ず、管理組合総会で否決されてしまうことも。たとえそのあとに適正価格に戻せたとしても、新築から数年間低めに設定されていた分だけ目標金額に達していないのが現状です。その不足分を取り戻すために毎月の積立金額にさらに上乗せしようとしても、やはり認められず…というパターンが多々あるようです。
足りなかった分を一時金として回収する手段もありますが、住民全員が10~100万単位にもなる一時金を揃って出すというのはほぼ不可能に近いでしょう。



●修繕費用が足りなかったら?

修繕積立金が目標金額にどうしても達することが出来なければ、手持ちの資金分で可能なものだけ工事を行うか、何もせずに放置するかの2択になると思われます。しかし、放置をすればその分だけ劣化は進みますから、何か問題が発生していざ修繕をしようとしても、さらに必要になる費用は増えているでしょう。
人間でも病気や怪我をした際、早急に病院へ行った場合と、放置に放置を重ねて悪化してから病院に行った場合では、完治するまでの時間も治療費も大きく違うもの。それと同じで、“今”修繕をした時の費用より、“後”で修繕する費用が増えていくのは当然のことなのです。

増えた修繕費用を後ででも何とか捻出できればまだマシなのかもしれませんが、資金を集めることが出来ずに放置、またはその場しのぎの修繕を続けていけば、マンションの老朽化はさらに加速してしまいます。劣化が進行すれば購入したいと思う人も減少し、空き部屋は増加。資産価値も下がる一方でしょう。


修繕積立金は何に使われているのか:修繕費用が足りなかったら

 

 

●なぜ新築時の設定金額が低いの?

それだけ重要なものなら、最初から修繕積立金の設定金額を平均かそれ以上にしておけば良いのでは、と思うかもしれません。
しかし買手側からすると、新築マンションを購入する際には物件の販売価格やそれに付随する諸経費など、大きなお金が動くものです。購入した後も、住宅ローンを利用していればその毎月返済額や、自家用車を所持していれば駐車場利用料、管理費、修繕積立金と、毎月家計から少なくない額のお金が出ていきますから、できればその負担が少しでも軽いほうが望ましいと考えるのは当然のことです。

物件の販売価格は、建築費や土地の購入費などそれぞれの利益がきっちりと決められているため、容易に値下げすることはできません。また、マンションを建設し販売する売主と、完成後にマンションを管理する管理会社はほとんどが同系列のグループ会社であるのが大半なため、管理費を低めに設定することを避ける傾向にあります。
唯一、修繕積立金はマンションの住民たちから構成される管理組合の貯金にあたるもので、売主には直接関係しないものになります。ですから売主はできるだけここを削って合計額を下げ、魅力的な価格を作り出してマンションを売りやすくしたい、という考えがあるからなのです。





《修繕積立金の相場》

 

国交省のガイドラインによると、一般的なマンションの場合だと“専有面積㎡(平米)=200円程度”が適切価格となっているようです。例えば60㎡ならば12,000円程度、70㎡ならば14,000円程度、80㎡ならば16,000円ほど。築年数や建物の階数などでも左右されますが、おおよそそのくらいが理想となっており、その積立金額がしっかりとマンションの住民から徴収できているのであれば、現時点では大きな問題はないといえるかもしれません。



●修繕積立金の方式の種類

修繕積立金の方式は、上述したように築年数が増えるごとに額が増加していく“段階増額積立方式”と、最初から必要な修繕金を計画期間で割って計算してあり値上がりせず同じ金額を支払い続ける“均等積立方式”の2種類が存在しています。しかし後者の均等積立方式を採用しているマンションは稀で、ほとんどのマンションは前者の段階増額積立方式が採用されています。こちらは購入時に必ず説明がありますので、購入の際にはしっかりと確認しておきましょう。

なお1970年代前後に建てられたマンションの中には、そもそも長期修繕計画が作成されていないため修繕積立金自体がないケースもあります。その場合、住民全員に多額の費用を一気に纏めて徴収する“一時金徴収方式”が取られる可能性があることも頭に入れておいてください。


修繕積立金は何に使われているのか:修繕積立金の相場


 

《購入前に修繕計画などの確認を》

 

安心してマンションに住み続けたいというのならば、“修繕積立金の額”と“長期修繕計画”に併せて、“総会議案書”“議事録”の確認をしておきたいところです。
分譲マンションの場合、毎年管理組合の総会が開催されており、“総会議案書”及び“議事録”にはそこで議論された意見や決議結果などが記されています。これを閲覧すれば、マンションのこれまでに解決してきた問題、今の時点で直面している課題、その対策など、だいたいの現状と課題が掴めてくるでしょう。

その中でも特に重要なのは、議事録に記された過去の決済報告です。どの程度の管理費・修繕積立金の未滞納者がいるか、その不足額はどのくらいかになるかも知ることが出来ます。もちろん各家庭の事情などもあるでしょうし、未滞納金が全くないマンションのほうが少数派ですから、ここでは完璧を求める必要はありません。
問題はそこではなく、それらの住民に対してどのような対策がなされているか。未滞納者をそのまま放置しているという事はその分の現金がマンション側にないというだけではなく、管理組合がしっかりと機能していない可能性があります。具体的にどのような姿勢でどのように未滞納問題に取り組んでいるかを、見定めることが可能なのです。



●書類はどうやったら見れる?

なお、“長期修繕計画”をはじめ“総会議案書”や“議事録”は、購入予定者であれば閲覧する権利があります。ですので、前向きに購入を考えられるマンションが見つかったら、不動産仲介会社を通してお願いをする形になります。
ですが、買手側にはあくまで閲覧する権利があるだけであって、マンション側に書類を公開する義務があるわけではないので、断られる可能性があることも理解しておく必要があります。内部情報ですから、購入予定者であるとはいえできるだけ第三者には公開したくないと考えているのでしょう。


が、逆を返せば閲覧に応じてくれるのであれば、信頼に足るマンション(管理組合)といえるかもしれません。管理状態や運営に自信があるだけでなく、自治総会やそれらの内容を記した議事録の重要性、さらにその情報公開の必要性をきっちりと理解しているからです。



●閲覧を拒否されたらどうする?

公開義務はありませんので、拒否されてしまったら内覧時に自分で確認するしかありません。
専有部分がついつい気になってしまうところですが、重視するのは共用部分のほうです。

・外壁タイルの剥がれや浮きはないか
・共用廊下やエントランスの壁や天井にひび(クラック)の発生がないか
・コンクリート成分が白く流れ出していないか(エフロ)
・コンクリート内部の鉄筋に水が触れて錆びた水が染みだしていないか
・屋上の防水シートが破れていないか
・屋上のコンクリートの劣化状況はどのようなものなのか

など。
これらは築年数が経過すれば必ず起こるもので、新築ではない限りは少なからず見られるものです。それらを管理組合員が把握しているのか、修繕予定があるのかどうかを確認してもらいましょう。
また、

・エントランスをはじめ駐車場やゴミステーションなどを含めた共用部分の清掃は行き届いているか
・掲示板の情報は新しいものか
・蛍光灯が切れてる部分はないか

などもチェックしておきたい場所です。
管理組合及び管理会社が機能しているか否かがはっきりと表れる部分ですので、これらが問題なければよいのですが、見過ごされているようであれば管理状態も望めないかもしれません。修繕積立金の問題が発生していても、放置されている可能性が高いでしょう。


修繕積立金は何に使われているのか:購入前の確認ポイント


《まとめ》

 

マイホーム購入というのは大きな買い物です。購入はゴールではなくスタートで、そこからの生活がありますから、毎月の出費をできるだけ抑えたくなるのは仕方のないもの。ですが修繕積立金の設定額の安さだけにつられてしまうと、長い目で見た場合、大きな落とし穴にはまってしまうかもしれません。
選ぶ際には立地や価格に注目しがちですが、30年、40年とそのマンションで快適な生活を送りたいのであれば、管理状態や修繕積立金額は見過ごすことのできない重要チェックポイントなのです。




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