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値上がりもあるの!?マンションの修繕積立金の相場とは?
夢のマンション住まい。マイホームとしてマンションを購入した場合、毎月支払わねばならないものが“修繕積立金”と“管理費”です。末永くそこに住むためには「購入したら終わり」ではなく、適切に維持・管理していくことが必要不可欠となっています。
中でも特に重要なのは“修繕管理費”。住宅ローンの他に毎月数万円出ていくのは少しきついなと思っていたり、ただ何も考えずに支払っていたりするかもしれません。でも実は、修繕管理費はずっとその額で固定でははなく、将来的に値上がりすることもあるって知っていますか?
今回は、マンションの修繕積立金をしっかりと理解しつつ、その相場と値上がりする理由をご説明します。
《修繕積立金と管理費の違い》
まずは、修繕積立金そのものをしっかりと知ることが大切です。
修繕積立金は同じく毎月支払う管理費と混同しがちですが、性質としては少し違ったものになっています。
■修繕積立金とは
修繕積立金は、マンションを修繕するために住民全員で積み立てている貯金のことです。人間で例えれば、健康診断や将来的な入院・手術のための貯金、健康保険などに近いものと考えてよいかもしれません。
建物診断や修繕工事を行う際に必要となる資金に充てられるもので、その金額は長期修繕計画に基づいて決定されています。マンションを長く維持するためには、外壁や屋上の防水工事などをはじめ、エレベーターや自動ドアなどの機械設備にも修繕は必要不可欠。そのような費用が大きくなりやすい大規模工事に備えて積み立てているのが“修繕積立金”なのです。
・外壁の修繕工事
・屋根及び屋上の改修工事
・廊下や階段、バルコニー等の床防水工事
・機械設備の修繕・交換
・手すりや扉等のペンキ塗り替え
・給排水管、受水槽等の取り換え
・窓サッシや郵便受等の交換
・自動火災報知機や屋内消火栓などの修繕・交換
こちらが主な用途となっています。
基本的に10年20年先を見越して定期的に行う工事に使用されますが、天災や不測の事故などにも充てられるようです。
■管理費とは
修繕積立金が「長期的な維持のための貯金」であるとすれば、管理費は「毎日の快適な生活を維持するためのお金」になります。人間で例えますと、日々の健康管理や少し具合が悪い時の病院代などに相当するでしょうか。
マンションの共用部分を維持管理するために充てられる費用で、エントランスや外廊下などの清掃費や水道光熱費、設備の点検代、そしてそれらを管理するための人件費などが含まれます。住民が快適に毎日を過ごせるよう維持管理するために使われるお金が“管理費”となります。
・管理会社や清掃会社への業務委託費
・清掃費及びごみ処理費
・管理組合運営費
・共用部分の水道光熱費
・共用部分の消耗品費
・共用部分の保険料
・植栽などの維持管理費
・軽微な破損等の修繕費
管理費でも軽度なものであれば修繕費として充てられたりもするので、余計に修繕積立金との差がわかりにくくなるのかもしれません。管理費は「日常的な維持管理のためのお金」、修繕維持費は「数年ごとに行う計画的な大規模修繕のためのお金」と覚えておけば良いでしょう。
●重要なポイントとなる“長期修繕計画”
修繕積立金の金額の元となっているのが“長期修繕計画”です。
一戸建てより寿命が長いとされているマンションですが、いくら長いといっても必ず劣化は進むもの。その老朽化を防ぎ、良い状態を維持していくため、10年後20年後と先を見据えどのタイミングでどこを修繕していくかが記されています。大規模な修繕工事はそれだけ膨大な費用となりますから、その代金を一括で支払えといわれても難しい話。住民たちの負担にならないよう、それでいて長期修繕計画書に記されている修繕費用に達することが出来るよう、そこから算出した金額分を毎月積み立てているというわけなのです。
最近では修繕積立金のシステムを新築当初から採用していないマンションは見られないようですが、築年数が高めのマンションの中には長期修繕計画が作成されていないもの、ある程度経過してから修繕積立金の徴収を止めてしまうところもあるようです。毎月の支払いというランニングコストが抑えられて魅力的に感じる方もいるかもしれません。ですが、いざ大規模修繕が必要となったときにマンション住民に多額の費用を一気にまとめて徴収する“一時金徴収方式”を実施する可能性があります。中には、そもそも大規模修繕を行う気がないところも含まれているでしょう。
このようなマンションは1、2年など短期で住むのなら問題ないかもしれませんが、長く住み続けたいのであれば慎重に検討を進めたいところです。
※修繕積立金について詳しく知りたい方はこちらの記事も!
マンションの修繕積立金って必要?何に使われているの?
《実際の修繕積立金の平均値》
次に気になってくるのは、今住んでるマンション、またはこれから買おうとしているマンションの修繕積立金が「相場より高いのか、低いのか?」ではないでしょうか。高すぎるのも問題ですが、低すぎて修繕費が足りなくなったら元も子もありません。
国土交通省が発表した平成30年度“マンション総合調査”によりますと、2018年(平成30年)の修繕積立金の平均は11,243円となっています。2008年(平成20年)の10,898円から、2013年(平成25年)の時点で10,783円と多少下がってはいたものの、1999年(平成11年)の時には7,378円、2003年(平成15年)には9.066円であったことを考えると、全体的に見てしまえば値上がり傾向であることは間違いありません。
●なぜ修繕積立金は値上がりしてるの?
上述しましたが、“長期修繕計画”に基づいて修繕積立金の額が決定されています。建物は時間が経過すればするほど劣化はしていくもの。これを防ぐためにはこまめなメンテナンスが必要で、そのメンテナンスをするためには欠かせないものが“長期修繕計画”なのですが、実は作成されるようになったのは割と最近のことなのです。
国土交通省が“長期修繕計画作成のガイドライン”を策定したのが2008年。つまり、これに従って長期修繕計画が見直しが行われ、さらにこれまで修繕計画が存在していなかったマンションも作成するようになったことから、全体的に値上がっているというわけなのです。
正しく言えば、以前が低めに設定されていただけで、「適正金額に修正されつつある」ことになるのでしょう。
●修繕積立金は固定額ではない?
入居したときに設定されていた修繕の積立金の額が、そのままずっと続くと思っていませんか?そこに値上げのお知らせなどが来て、「納得できない!」と思う人も少なからずいるでしょう。 しかし、築年数が増えていくにしたがって金額も増えておくと思ったほうが良いかもしれません。
《修繕積立金が増額される主な理由》
修繕積立金はマンションにとって大切なものであること、全体的に値上がり傾向であること、修繕計画の見直しで増額される可能性があることは理解できましたでしょうか。 では次に、修繕積立金が値上げされる理由を詳しく見ていきましょう。
1.新築時の初期額が低くく設定されていた
一般的に、中古マンションより新築マンション分譲時の修繕積立金の額は低めにされている傾向があります。ですが、「新しいマンションは修繕する必要がないから」というわけではなく、これはマンションを建てて販売する(不動産会社)側が売りやすくするために意図的に低く設定しているのです。端的に行ってしまえば、「安いほうが売りやすいから」。
そもそもマンションの販売価格は、建設や販売に携わった会社でそれぞれの利益の取り分がきっちりと決められています。ですのでいくらマンションを安くして売りやすくしたいと思っていても、ここを削ることはまずありえません。次に管理費ですが、ここもマンションを建設した売主側と同系列のグループ会社が管理会社であることが多いため、ほとんどのケースで管理費の設定額が削られることはないでしょう。
唯一、修繕積立金は売主側と関係がない“マンション住民から構成される管理組合”のものとなります。売主が痛みを感じることのない修繕積立金を削れるだけ削って「お得な販売価格」を作り出して売りやすくしている、というわけなのです。
また、2008年のガイドライン策定前の中古マンションの場合も、そもそも最初から修繕積立金の額が低く設定されていた可能性が高いため、将来的に値上がりすることは必然なのかもしれません。
2.値上げが確定している徴収方法であった
修繕積立金の徴収方法は、“均等積立方式”と“段階増額積立方式”の2種類が存在しています。
“均等積立金”は、その期間中は修繕積立金の額が固定されていて増えることも減ることもありません。修繕で必要になる総額を計算して出し、修繕工事開始までの期間で割った額を毎月支払うことになります。国交省のガイドラインでもこの均等積立法式が推奨されているのですが、実際にはこちらのケースのほうが少ないようです。
そして、大半のマンションでとられているのが“段階増額積立方式”です。徐々に値上がりすることが当初から決められているのです。1で説明した「初期値が低く設定されているマンション」はこちらの方式をとっているからで、ずっとその初期値のままであることはまずないでしょう。販売当初の積立金の額では最初の大規模改修工事をギリギリ行える程度のものですので、地震や台風などで劣化が早く進むなどすればすぐに足りなくなってしまいます。この方式をとっているのであれば、早急な値上げをせざるを得ないのです。
購入時の修繕積立金が安く設定されているところと、高く設定されているところを比べてしまえば、どうしても安いほうを選択してしまいがち。購入する際には積み立て方式の説明は必ずあるのですが、10年20年先のことではなく“今”のことばかり考えていると聞き落としてしまいやすいのかもしれません。
3.修繕工事費の価格が上昇した
高齢化が進み、労働人口がどんどん減っている時代。働き手の減少に歯止めをかけることが出来ず、数少ない施工職人で何とか回している状態ですから、人件費はもちろん高騰しています。それなのに、震災復興需要や2020年にはオリンピックを控えていることにより工事そのものの数は増加傾向という状況。外国人雇用の拡大により今後が期待されますが、どれほど緩和できるのかは予想することはできません。
ただ現時点では、そのような人件費の高騰に伴って修繕積立金も値上がりしているのでしょう。
4.長期修繕計画になかった工事の実施
どのタイミングでどこを修繕するのか記されている“長期修繕計画”ですが、これはあくまでも“修繕”であってリニューアルなどグレードアップするための工事費は組み込まれていません。建設当時は最新だった設備も年数を重ねるごとに古さを感じてきますし、スロープや手すりを設置するバリアフリーの工事も必要になるかもしれません。ですがこれらは修繕ではないため積立金に含まれていないのです。
そのような不足金を補うため、銀行では管理組合向けのローンも存在しているのですが、そういったもので補えば管理組合は修繕積立金から返済することになります。そしてその不足分を補うためには、修繕積立金額を値上げするほかないのです。
5.管理会社に委託している
住民たちがすべてを自主管理しているマンションでない限り、多少なりとも管理会社に委託している管理組合がほとんどです。素人が集まっただけのものより、管理のプロに任せたほうが安心できるなどメリットも多いのですが、その分を修繕工事会社より仲介手数料(取り分)として管理会社に支払われるため、支払う修繕費の額も増えることになります。
そうなれば修繕積立金も減りますから、不足分を補うために値上げを実行する、という形になるのです。
それ以外にも、一部のマンションの住民が修繕積立金の支払いの義務を怠った結果、修繕積立金が不足し全体的な値上げに踏み切ることあります。
なお値上げのタイミングですが、“均等積立方式”では支払いが固定された期間は「修繕工事からその次の修繕工事まで」となっていますので、次回の修繕工事の見積もりが前回より高ければ値上がりすることになるでしょう。
また、“段階増額積立方式”の場合は、「長期修繕計画に基づいて修繕積立金の額が決定されている」とお伝えした通り、長期修繕計画はおよそ5年ごとに見直しが行われるため、このタイミングで修繕積立金の増額が決定される可能性があります。もちろん十分な積立額に達していることもありますので、増額が確定というわけではないでしょう。ですが大半のマンションでは積立金が不足しているのが現状。こちらでもおよそ10年~15年おきに行われる大規模修繕の見積もりを取った際、この結果に合わせて見直されることがほとんどとなっているようです。
《築年数と修繕積立金の関係》
修繕積立金の平均値は上述しましたが、「新築のほうが修繕積立期の設定額は低く、古くなるほど額は増えていく」ともご説明しました。つまり完成した年数ごとに見てみれば、実際の修繕積立金の徴収額と相場を知ることが出来るのです。
国土交通省が発表した“マンション総合調査”によりますと、2013年時点の㎡(平方メートル)あたりの月相場は
1969年(昭和44年)以前:253円
~1974年(昭和49年) :166円
~1979年(昭和54年) :163円
~1984年(昭和59年) :166円
~1989年(平成元年) :168円
~1994年(平成6年) :157円
~1999年(平成11年) :144円
~2004年(平成16年) :122円
~2009年(平成21年) :120円
2010年(平成22年)以降:132円
不明 :164円
全体平均 :149円
となっており、部分的に差が見られない箇所はあるものの、全体的に築年数が増える建物ほど修繕積立金は高くなっていることがわかるでしょう。ここからも、新築分譲時から時間がたつほど値上がりしていく“段階増額積立方式”を採用しているマンションが多いことも読み取れます。
■戸数や階数、駐車場によっても額は変化
こちらも“マンション総合調査”によると、マンションの総戸数によって修繕積立金の額は左右されています。
たとえば、21戸~500戸ほどのものであればそれほど大きな差はないのですが、20戸以下の小規模のマンションは相場はやや高めになります。修繕の総工費は小規模であれば安くなると思いがちなのですが、大量発注したほうが単価は安くなりやすいもの。さらに戸数が少なくなる分、一戸当たりの負担も重くなってしまうため、その分修繕積立金も高めに設定されるのです。
また、階数によっても変化は見られます。たとえば15階未満のものでも、建築延床面積が狭いほど修繕積立金額はやや高めになります。戸数と同じで、「延床面積が狭い=規模が小さい=戸数が少ない」ことが主な理由です。
大規模マンションでもタワーマンションのような超高層のものになりますと、同じように設定額は高め。外壁の塗り替えだけでも足場組みはかなり大掛かりなものになりますし、プールなどの防水処理の修繕費など、充実した共用施設の維持に費用が嵩みやすいからです。
同じような理由で、駐車場が機械式であればその維持のために高めの傾向にあります。基本的に駐車場は使用者の駐車場使用料と管理費で賄うものなのですが、機械式駐車場の場合は様々な電動部品や消耗部品が組み合わさってできており、定期的なメンテナンスと大規模な部品交換や修繕の必要もあるため、修繕積立金が使われていることがほとんどです。
《修繕積立金を正しく理解して、将来的に損をしないために!》
新しくマンションを購入しようと思ったとき、住宅ローンなどの出費で頭がいっぱいになってしまい、修繕積立金にまで気が回らないかもしれません。また、“今”にばかり気を取られて、「修繕積立金が安いところ」を選ぼうとしているかもしれません。
修繕積立金は、マンションを住みやすく快適な状態に維持するために欠かせないもの。購入直後はそれで何も問題はなくとも、積立金の額が少なければその分しか修繕することが出来ず、将来的に大きな問題に直面するかもしれません。
マンションによっては修繕積立金の月額から、今マンションにある修繕積立金の総額も公開している物件もありますので、マンションを新しいマイホームとして探している際には、ぜひこちらにも注目してみてはいかがでしょうか。
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